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1992年9/4(金)-9/23(水)「十河雅典展」
 ■キャンバスにアクリル。

展覧会DMより
人間は一体どこにむかって歩んでいるのだろうか。ふとそんな虚をついた問いを投げかけるのが十河雅典の画面である。ウィルス、アメーバー、動植物、人間、大陸、太陽、地球そして宇宙。極小と極大のちょうど中間の有機体である人類は、一方では人類以外のものを食いあらし一途に生産力を肥大化させてきた。なかば記号と化した生産力はもはや一人の社長の視野のうちにも見えないほどのびきって網の目の情報を張りめぐらせているわけだがそんな二重の意味の地球儀空間を、エイ、ヤッと展開図にしてみせてくれるのが彼の画面だ。作者は俗悪低級ないかものの琳派を装うことによって、人の歩みにも生産力の拡張にも加担はしない。ちょうど中間に浮遊することは現実を脱臼させるには絶好の居場所らしい。むせかえるように息づいて邪悪な美が芽生えてくる気配がする。
―――田中幸人(埼玉県立近代美術館 館長)